ChatGPTをはじめとする生成AI(大規模言語モデル:LLM)は、文章作成、プログラミング、翻訳、資料作成など、あらゆる業務を効率化する強力なツールとして注目されています。
しかし、その便利さの裏側には、「入力した情報が外部に渡ってしまうのではないか」「誤情報をそのまま使ってしまうリスクはないのか」といった懸念も存在します。
実際、企業の従業員が機密情報を生成AIに入力した結果、情報漏えいにつながるリスクが話題となった事例もあります。生成AIを正しく安全に活用するためには、その仕組みとリスクを理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
生成AIのリスクとは?入力情報が外部に漏れる可能性
生成AIの多くはクラウド上のサーバーで動作しており、ユーザーが入力したテキストは一度外部に送信され、処理された上で回答が返されます。
この仕組みによって以下のリスクが発生します。
個人情報の漏えい
名前・住所・電話番号などを入力すると、クラウド上に保存されたり、不正アクセスの対象になったりする可能性があります。
企業機密の流出
社内文書やソースコードを入力すると、第三者が閲覧可能な環境にデータが残るリスクがあります。
誤情報(ハルシネーション)の生成
AIは「もっともらしいが誤った情報」を自信満々に提示することがあります。これを鵜呑みにすると、誤解や不正確な意思決定につながります。
著作権リスク
学習元に含まれるコンテンツをもとに生成されるため、知らないうちに著作権侵害につながる可能性もあります。
個人利用における生成AIのセキュリティ注意点
個人が日常的に生成AIを利用する場合も、以下の基本的な注意を守ることで安全性が高まります。
- パスワードや金融情報は入力しない
- 住所や勤務先など個人を特定できる情報は伏せる
- AIが出力した文章は必ず自分で検証し、誤りがないか確認する
- 医療・法律・投資など専門性の高い内容は参考程度にとどめ、専門家に確認する
企業利用での生成AIリスクとセキュリティ対策
企業にとって生成AIは大きな業務効率化の可能性を秘めていますが、その反面リスクも拡大します。特に顧客情報や内部文書を扱う場合、外部サービスに入力することは情報漏えいの危険性が高まります。
企業利用において有効な対策は次の通りです。
利用ポリシーを策定する
社員がどの範囲でAIを使えるのか、入力してよい情報・禁止する情報を明確化します。
情報管理を徹底する
機密情報を入力しないルールを徹底し、必要に応じてマスキングや匿名化を行います。
専用環境を用意する
Microsoft Copilot など、企業向けにセキュリティが強化できるサービスを選択するのも一つの方法です。
セキュリティ部門との連携
IT部門が利用状況を監視・制御できる仕組みを整備することが望まれます。
セキュリティを最優先にするなら「自分でサーバーにLLMを構築」する選択肢も
ここ数年、セキュリティを最重視する企業や研究機関では、クラウドの生成AIサービスではなく、自社のサーバーやプライベートクラウド上に大規模言語モデルを構築する という取り組みが広がっています。
メリット
- データが外部に出ない:入力情報がすべて社内環境で処理されるため、顧客情報やソースコードを安心して扱えます。
- 業務に特化したカスタマイズが可能:自社マニュアルや社内ナレッジベースを学習させ、業務専用の「社内AIアシスタント」を育成できます。
- セキュリティ基準への対応:医療や金融、官公庁など、高いセキュリティ要件が求められる分野でも導入可能です。
デメリット
- コスト負担が大きい:GPUサーバーの導入やモデルの運用には高額な費用がかかります。
- 専門知識が必要:モデルの更新や最適化を自力で行う必要があり、AIエンジニアの確保も課題です。
導入の選択肢
- 個人・小規模:Ollama、LM Studioなどを使ってPCで軽量モデルをローカル実行
- 中規模・大規模:物理・仮想サーバなどにLlamaやMistralをデプロイ、またはNVIDIA NIMを利用して専用基盤を構築
このように「自前でLLMを動かす」という手段は簡単ではありませんが、セキュリティと利便性を両立する有効な選択肢となります。
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安全に生成AIを活用するための心得
最後に、安全に生成AIを使いこなすための基本ルールを再整理します。
入力する情報を厳選する
個人情報や機密データは極力入力しない。
利用ポリシーを整備する
特に企業では「入力禁止情報」を明確化して周知する。
ローカルLLMやプライベート環境を検討する
セキュリティを重視する場合、自前環境での利用が安心。
AIの回答をそのまま鵜呑みにしない
出力結果は必ず検証し、ファクトチェックを行う。
まとめ
生成AIは私たちの生活や仕事を大きく変えるポテンシャルを持っています。しかし、その利用には必ずリスクが伴うことを忘れてはなりません。
不用意に個人情報や機密データを入力するのは危険であり、利用ポリシーの整備やローカル環境でのLLM構築といった対策が求められます。
生成AIは「便利さ」と「危険性」が表裏一体のツールです。正しい知識とルールを持って利用すれば、私たちの強力なパートナーとなるでしょう。
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