システムエンジニア(SE)としてのスキルといえば、要件定義、設計、コーディング、テストといった“作る力”が注目されがちです。しかし“伝える力”も同じくらいに重要です。
クライアントとの対話、プロジェクトメンバーへの説明、経営層への提案、後輩育成と、これらはすべて、「伝え方」で成果が大きく左右される仕事です。
今回は、SEへのおすすめ書籍である日本マイクロソフトの西脇資哲氏による著書『エバンジェリスト養成講座』をベースに、SEに必要な“伝える技術”を解説します。
書籍『エバンジェリスト養成講座』とは?
本書は、日本マイクロソフトの有名エバンジェリスト西脇資哲氏が、「伝える技術」を体系化した一冊です。
「エバンジェリスト」とは本来“伝道者”という意味ですが、IT業界では製品や技術をユーザーにわかりやすく伝える人を指します。
本書では、技術的な話をどうすれば「誰でもわかる言葉」で、「面白く」そして「行動につながるように」伝えられるか――その技術が豊富な事例とともに語られています。
なぜSEに「エバンジェリスト的スキル」が必要なのか
多くのSEは、以下のような悩みを持っています。
- クライアントが説明に納得してくれない
- プレゼンがうまく伝わっていない気がする
- 上司に提案しても「よく分からない」と言われる
- 自分の技術をうまくアピールできない
これらの根本原因の多くは、「伝え方」にあります。
SEは専門用語や構造を理解していても、それを“技術者以外の視点で翻訳”して伝える訓練を受けていません。『エバンジェリスト養成講座』は、まさにそのスキルを教えてくれる教科書です。
『エバンジェリスト養成講座』で学べる、SEに役立つ3つの考え方
「相手目線」に立つことがすべての出発点
西脇氏が繰り返し強調しているのが“聞き手視点”です。
「あなたが伝えたいこと」ではなく、「相手が知りたいこと」を伝えなさい。
SEは「機能」や「構成」ばかり説明しがちですが、相手が求めているのは「それがどう役立つのか」「自分にどんなベネフィットがあるのか」です。そのためには、相手の業務や背景に関心を持ち、共感する姿勢が不可欠です。

本書の初版を読んだ頃、自分はプレゼン資料に紹介したいモノの「機能・仕様」ばかり書いていました。それは相手が聞きたいことではない、自分よがりな内容になっていたことに気づかされました。
ストーリーで構成せよ
本書では、伝える内容を「ストーリー構造」に落とし込むことが勧められています。
- なぜこの課題が重要か(背景・問題提起)
- 解決方法は何か(自社の提案・技術)
- その結果どんな価値が生まれるか(未来像)
SEがプレゼンする際も、仕様の羅列ではなく「なぜ」「どうする」「どうなる」という物語のような流れを意識することで、聞き手に“刺さる”説明が可能になります。
情報量ではなく「伝達効率」を重視せよ
多くの技術者は、「たくさんの情報を詰め込む」ことがよいプレゼンだと思いがちです。しかし、本書では、質を重視せよ、と説きます。
- スライドはシンプルに
- 1枚1メッセージ
- 専門用語は避けるか、補足する
- ジェスチャーや間も“伝える要素”
「いかに相手に理解・納得・共感させるか」が成果を左右するということです。
まとめ:SEにこそ“伝える訓練”が必要な時代
『エバンジェリスト養成講座』は、ただのプレゼンテクニック本ではありません。「思考と伝達の教科書」です。
伝える力があるSEは、プロジェクトの中心になり、キャリアの選択肢も大きく広がります。
あなたの伝え方が、チームや顧客を動かす力になる――その一歩として、本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?
西脇氏による同名のセミナー・講座が開催されることもあります。こちらに参加してみるのもお勧めです。
最後までお読みいただきありがとうございました。当ブログは日常のICTの困りごとを解決するためのノウハウを発信しているサイトです。トップページもご覧ください。