様々なサービス、アプリケーションを利用する世の中なので、それを用いるためのユーザー管理、パスワード管理が複雑になってきています。あまりにパスワードが増えてきたので、すべて同じワードにして使っていませんか?
パスワードは、あなたのオンラインアカウントを守るための最初の防御線です。しかし、総務省や情報処理推進機構(IPA)の調査では、使い回しパスワードや簡単すぎるパスワードが情報漏えいの原因になっている事例が多数報告されています。
- データ漏えいの多くはパスワード関連
攻撃者は「リスト型攻撃」と呼ばれる手法で、他サービスから流出したID・パスワードを使い回して不正ログインを試みます。 - SNS・ECサイトの乗っ取り被害
ネットショッピングやSNSアカウントの乗っ取りは、金銭的・社会的リスクを伴います。
こうした背景から、強固で適切なパスワード管理が必須になっています。
パスワードの必要性と認証・認可
まず、パスワードは何のために必要なのか、考えてみます。
認証(Authentication)
認証とは、ユーザーが間違いなく本人であることを確認するプロセスです。一番普及しているのが、ユーザー名とパスワードを使用して本人確認を行う方法です。
他にも、指紋認証、顔認証といった生体認証などが使われています。
認可(Authorization)
認可とは、認証が完了した後に、そのユーザーがどのような操作やサービス利用が可能となるか、権限を確認するプロセスです。認可は、特定のサービス利用やファイルへのアクセス許可などをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
パスワードによる認証・認可は最も使われている方法なのですが、以下のような問題があって、セキュリティ侵害の原因にもなっています。
- 設定するパスワードが簡単に推測できてしまうケースも多く、脆弱です。
- 様々なサービスやアプリケーションで同じパスワードを使いまわしてしまうと、1つのパスワードが漏洩するとたちまち複数のサービス、アプリケーションが侵害されるリスクがあります。
- 利用するサービスやアプリがどんどんと増えているので、同時に増えていくパスワードの管理が難しくなっています。忘れてしまうこともしばしば起こるでしょう。
安全なパスワードの作り方と覚え方
単純なパスワードは即座に突破されます。安全なパスワードを作るためのポイントを押さえましょう。
複雑なパスワードの条件
2025年現時点、以下のような条件から構成されるパスワードが、複雑なパスワードと言えます。
- 文字数は12文字以上
- 大文字・小文字・数字・記号を混在
- 推測されやすい情報(誕生日、名前)は避ける
いろいろな文字・数字・記号の意味のない組み合わせが推測されず理想的です。でも覚えられないですよね・・・
覚えやすく安全なパスワードの工夫
安全なパスワードとは、他人から推測されず、ツールなどの機械的な処理で割り出しにくいものが理想です。複雑なパスワードを、覚えられる構成で考えましょう。
複雑なパスワードの条件にあったように、適度な長さと英文字・数字・記号を混ぜるなどの工夫が必要です。また、以前は定期的にパスワード変更することが推奨されていましたが、最近はむやみに変更を行わないように、見直されています。
- パスフレーズを活用
- 複数の単語を組み合わせる
やってはいけないパスワード管理NG習慣
以下のような方法・習慣は、パスワード管理上良くないので、この機会にぜひ見直してください。
- 同じパスワードの使い回し
- メモ帳やExcelでの保存
- 誕生日や電話番号をそのまま使う
パスワード管理の主な方法と特徴
パスワード管理には複数の手法があります。それぞれの特徴とリスクを理解しましょう。
紙に書くのは安全?
- メリット:インターネットに接続しないので、ネットワーク経由のハッキングリスクなし
- デメリット:紛失・盗難の可能性あり
ブラウザのパスワード保存機能
- メリット:自分で覚えなくてよい、自動入力で便利
- デメリット:ブラウザに保存されるため、PC乗っ取りで一括流出リスクあり
オンラインでパスワード管理ツールを使う
- メリット:複雑なパスワードを自動生成、暗号化して安全に保管、PC・スマホ間で同期可能
- デメリット:漏洩リスクが完全にゼロではない
おすすめのパスワード管理ツール【無料&有料】
複数のパスワードを覚えられない、管理できないという点に対しては、パスワードマネージャー(パスワード管理ツール)をうまく使いましょう。自分のパスワードを預けるわけですから、信頼のおけるサービスを選定のうえ、使うようにしてください。
ここでは、世界的に信頼されているパスワード管理ツールを紹介します。
1Password
「1Password」は世界で1500万人以上が愛用する、定番のパスワード管理サービスです。 すべてのパスワードと重要なデータは、1つのマスターパスワードで保護されます。
ソースネクストで購入すると3年版をメーカー公式よりも安い特別料金で購入できますよ。
Bitwarden
Bitwardenはオープンソースで公開されており、無料でも機能が充実した優秀なツールです。
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パスワード管理をさらに強化する方法
記載したようなパスワードを使った認証プロセスのセキュリティ強化対策のひとつとして、単一の認証情報に任せるのではなく、認証のプロセスを2段階にして行う「2段階認証」があります。
2段階認証であれば、攻撃者が1段階目のパスワードを盗んだとしても2段階目の認証を突破することはできず、なりすましや不正アクセスを防ぐことができます。
皆さんもすでにお使いでなじみがあると思いますが、2段階認証は以下のようなものが使われています。
種類 | 説明 |
---|---|
SMS/メールコード認証 | ログイン時に一時的なコードがSMSやメールで送信され、それを入力する |
アプリトークン認証 | Google AuthenticaterやMicrosoft Authenticaterなどの認証アプリを使用して生成される一時的なコードを入力する |
ハードウェアトークン認証 | 物理的なデバイスが一時的なトークン(ユーザーが誰かや持っている権限を、人間が解読できない文字列に置き換えたもの)を生成し、それを入力する |
生体認証 | 指紋や顔認証を使用して認証を行う |
プッシュ通知 | スマートフォンにプッシュ通知を送り承認を求める |
二要素認証(2FA)の活用
厳密には2段階認証の中にも2要素認証(2FA)という概念があります。
2段階認証というのは、認証のプロセスが2段階の複数のプロセスに分かれていることを指します。一方、2要素認証とは、認証のプロセスを2つの異なるカテゴリーの要素で認証することを指します。
カテゴリーと要素は
- 「知識情報:知っていること」(例:パスワード)
- 「所持情報:持っていること」(例:スマートフォンやハードウェアトークン)
- 「生体情報」(例:指紋や顔)
の3つがあり、このうちの2つのカテゴリーを組み合わせることで本人確認を行います。このうち、生体情報が最もセキュリティ上は強力とされています。
このように、2段階認証・2要素認証を利用することで、従来のパスワード管理だけを利用するよりもセキュリティが強力になります。いろいろなサービスがこの2段階認証・2要素認証を取り入れていますので、ぜひ利用するようにしてください。
ただし、最近はSMSを使った2要素認証は悪用されるケースが出てきています。Evernote、Apple、Microsoft、X、GmailをはじめとしたGoogleのサービスなどもSMS認証を取りやめています。注意してください。
パスキー(Passkey)の活用
さらに近年、パスワードを使わない・パスワードレスへの移行が始まっています。そこで使われるのがパスキー(Passkey)です。
パスキーは指紋や顔認証を利用した次世代認証で、GoogleやMicrosoft、Appleなども採用を進めています。下記の記事で記載していますので、参照してください。
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よくある質問(FAQ)
パスワード管理ツールは安全ですか?
暗号化技術で保護されており、メモやExcelで保存するよりずっと安全です。ただし信頼できるサービスを選びましょう。
無料ツールで十分ですか?
個人利用ならBitwardenなどの無料プランでもOKです。
まとめ:パスワード管理は「複雑+管理ツール+二要素認証」が基本
パスワード管理は、現代のデジタル社会において最も重要なセキュリティ対策の一つです。簡単なパスワードや使い回しは、攻撃者にとって格好の標的となり、SNSアカウントの乗っ取りや不正利用など重大な被害を引き起こす可能性があります。そのため、まずは複雑で推測されにくいパスワードを設定することが基本です。
しかし、複雑なパスワードを複数のサービスで使い分けるのは現実的に難しいため、パスワード管理ツールの活用が非常に有効です。これらのツールは、安全にパスワードを生成・保存し、PCやスマートフォン間で同期できるため、利便性とセキュリティを両立できます。
さらに、二要素認証(2FA)を導入すれば、パスワードが漏えいした場合でも、不正アクセスを防ぐことが可能です。今後はパスキーなど、パスワードを不要とする新しい認証技術も広がっていくと考えられます。
つまり、パスワード管理の基本は「強固なパスワード」「管理ツールの活用」「二要素認証の導入」の3つです。
今日からでも、自分のアカウント管理方法を見直し、安全なオンライン環境を構築しましょう。
ただし、すべての脅威に対して万能な方法というのはありませんので、いずれの方法にしても過信せず、認証情報の取り扱いは注意するようにしましょう。
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