2025年、Amazon Web Services(AWS)の市場シェアが30%を割り込みました。これは、同社が長年にわたり維持してきた35%前後の支配的なポジションからの着実な減少を示しています。
今から6年前の2019年当時には、AWSは圧倒的なリーダーであり、クラウド市場の約1/3以上を占めていました。しかし現在では、Microsoft Azure(約22%)、Google Cloud(約12%)といった競合が急成長し、「ビッグスリー」は市場を三分するような状況へと変化しています。
この変化の背景には、AIの需要拡大、ハイブリッドクラウドの進展、そしてマルチクラウド戦略の一般化など、企業のIT戦略の大きなシフトが存在します。
AWSは過去には約35%のシェアを保持していた
Amazon Web Services(AWS)は、長年にわたってクラウドインフラ市場の絶対的リーダーとして君臨してきました。特に2019〜2020年頃には、35%前後の市場シェアを安定的に維持しており、2位のMicrosoft Azureに10ポイント以上の差をつけていました。
この時期、AWSは特に以下の点で先行していました。
- 圧倒的なグローバルインフラの規模
- 豊富なサービスラインナップ(EC2、S3、Lambdaなど)
- スタートアップからエンタープライズまで幅広い顧客層
しかし、その優位性は徐々に縮小されつつあります。
年ごとの市場シェアの推移
年度 | AWS | Azure | Google Cloud |
---|---|---|---|
2019 | 約33〜35% | 約16% | 約6% |
2020 | 約32〜34% | 約18% | 約7% |
2021 | 約32% | 約20% | 約9% |
2022 | 約31% | 約21% | 約10% |
2023 | 約30% | 約23% | 約11% |
2024 | 約30% | 約24% | 約12% |
2025(5月時点) | 約29% | 約22% | 約12% |
※データは複数の調査会社の情報を統合
市場シェアの変動要因
AI需要の高まり
AI(人工知能)や生成AIの需要が急増し、これらの技術に対応したインフラへの投資が加速しています。特に、Microsoft AzureはOpenAIとの連携を強化し、Google CloudはVertex AIやGeminiなどのAIプラットフォームを提供しています。
AWSもBedrockやSageMakerなどのAIサービスを展開していますが、AzureやGoogle Cloudに比べて遅れを取っているとの指摘もあります。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの普及
企業のクラウド戦略が多様化し、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドや、複数のクラウドサービスを併用するマルチクラウドの導入が進んでいます。
Microsoft Azureは、Azure Arcなどのハイブリッドクラウドソリューションを提供し、企業のニーズに応えています。
競争の激化と新興ベンダーの台頭
従来の上位3社に加え、CoreWeaveやOracle、Databricksなどの新興ベンダーがAIやGPU対応のサービスを強化し、市場シェアを拡大しています。
これにより、従来の「ビッグスリー」のシェアが相対的に低下し、競争が激化しています。
市場動向と今後の展望
2024年のクラウド市場は、前年比22%増の910億ドルに達し、年間では3300億ドルを超える規模となりました。今後、AIやデータ分析、セキュリティなどの分野での需要が高まり、クラウド市場の成長が期待されます。
AWSは引き続き市場リーダーであり、年間売上高は1,150億ドルを超える見込みです。
まとめ:クラウド市場の多極化と競争の深化
AWSの市場シェアが約30%に低下した背景には、AI需要の高まりやハイブリッドクラウドの普及、新興ベンダーの台頭など、複数の要因が影響しています。
今後、クラウド市場はより多極化し、競争が一層激化することが予想されます。
企業は、技術的な要件やコスト、セキュリティなどを総合的に考慮し、最適なクラウド戦略を策定することが求められます。
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