近年、証券会社のオンライン取引において、不正ログインによる被害が相次いで報告されています。これらの被害は、個人投資家の資産を直接的に脅かす深刻な問題であり、金融機関としてもセキュリティ対策の強化が急務となっています。
2025年は証券口座の乗っ取り被害が増加中
このような事案は、少し前からも存在し、報道されてきました。
例えば、2020年9月、SBI証券では顧客口座から約9864万円が不正に出金される事件が発生しました 。犯人は偽造した本人確認書類を用いて銀行口座を不正に開設し、SBI証券に不正アクセスして出金先口座を変更。その後、証券口座から銀行口座へと資金を移動させました。
SBI証券は、IDやパスワードなどの情報がどのように取得されたかは明らかにしていませんが、この時は顧客の管理不十分が一因とされています。
また、岡三オンライン証券では、2020年9月15日から17日にかけて、208口座に対する不正アクセスが試みられました 。幸い、資産の流出は確認されませんでしたが、ログインIDやパスワードがどのように取得されたかは不明でしたが、顧客のセキュリティ意識の低さが問題視されています。
しかしこのところは、新しい少額投資非課税制度(NISA)をきっかけにネット証券の投資家の範囲が拡大したせいか、セキュリティー意識が低いユーザーも増えている傾向があると考えられています。こうした個人をターゲットとしたフィッシング詐欺と思われる攻撃・手口が急増し、2025年の2月~4月の間だけで3000件にものぼっています。
投資家が今すぐ実践すべき5つの対策
多要素認証(MFA)の設定を必ず行う
最も効果的な対策が「多要素認証」の導入です。パスワードに加えて、スマートフォンのワンタイムパスワードや生体認証を組み合わせることで、不正アクセスを大幅に防ぐことができます。
ユーザーIDやパスワードが漏洩したとしても、手元のスマートフォンなど使われなければログインされることは防ぐことができます。
- 実践方法
- 各証券会社のセキュリティ設定画面から「二段階認証」や「多要素認証」を有効にする。
- スマートフォンのアプリ(Google Authenticatorなど)と連携させる。
- SMS認証よりもアプリ認証の方がセキュリティ強度が高いため、可能ならアプリ認証を選択する。
メールのリンクは絶対にクリックしない
フィッシング被害の多くはメールから始まります。
最近は非常に巧妙で本物そっくりのメールやサイトで偽装されることも増えてきました。一見、証券会社からのメールに見えても、リンクをクリックするのは危険です。
- 実践方法
- 証券会社の公式サイトには実績あるブックマークやアプリから直接アクセスする習慣をつける。メールのリンクは使わない。
- 「重要なお知らせ」や「口座凍結」などの不安を煽るメールには特に警戒する。
- 少しでも怪しいと感じたら、メールを開かずに削除する
ブラウザのパスワード保存機能を無効にする
InfoStealer(情報窃取型マルウェア)などはブラウザに保存されたパスワードを狙います。特に証券口座に関する情報は、ブラウザに保存しないよう設定を変更しましょう。
- 実践方法
- Google Chromeの場合:設定→自動入力→パスワードマネージャー→パスワードを保存するをオフにする。
- 証券サイトのURLを「パスワードを保存しないサイト」リストに追加する。
- パスワード管理はブラウザではなく、専用のパスワードマネージャーを使用する。
「1Password」は世界で1500万人以上が愛用する、定番のパスワード管理サービスです。 すべてのパスワードと重要なデータは、1つのマスターパスワードで保護されます。
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セキュリティソフトの導入と定期スキャン
最新のマルウェアにも対応できるよう、信頼できるセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ちましょう。
- 実践方法
- 信頼できるセキュリティソフト(Norton、マカフィー、ESETなど)を導入する。
- 自動アップデート機能を有効にする。
- 週に1回は完全スキャンを実行する。
- 不審なファイルやアプリはダウンロードしない。
以下のような信頼あるウィルス対策ソフトの利用がおすすめです。
取引履歴の定期確認を習慣化する
不審な取引がないか、定期的に確認することが大切です。早期発見が被害を最小限に抑えるカギとなります。
- 実践方法
- 週に1回は証券口座にログインして取引履歴をチェックする。
- 取引通知メールは保存し、定期的に確認する。
- スマートフォンアプリの通知設定をオンにし、取引発生時に即座に通知を受け取れるようにする。
- 不審な取引を発見したら、すぐに証券会社と警察に連絡する。
証券会社が提供するセキュリティ機能を活用する
多くの証券会社では、不正アクセスを防ぐためのセキュリティ機能を提供しています。これらを積極的に活用することで、さらなるセキュリティ強化が可能です。
最近の被害急増の状況を受けて、証券会社はこれら機能の利用を必須にする動きも出るでしょう。
- ワンタイムパスワードサービス(二要素認証):取引時にスマートフォンアプリで発行される一時的なパスワードを入力することで、セキュリティを強化できます。
- メール通知サービス:ログインや出金などの操作が行われた際に、登録したメールアドレスに通知が届きます。これにより、不正な操作に早期に気づくことができます。
- ログイン履歴の確認:定期的にログイン履歴を確認し、不審なアクセスがないかチェックすることが重要です。
まとめ:投資家自身のセキュリティ意識が資産を守る
証券会社の不正ログインによる被害は、今後もゼロにはならないと考えられます。なぜなら、サイバー攻撃の手口は年々高度化しており、完全な防御は困難だからです。しかし一方で、投資家一人ひとりが基本的なセキュリティ対策を徹底すれば、被害のリスクを大幅に減らすことができます。
「パスワードを複雑にする」「2段階認証を有効にする」「不審なメールには反応しない」──こうした基本的な行動が、資産を守る最初の盾になります。
また、証券会社が提供しているセキュリティ機能も十分に活用しましょう。中には、ログインアラートや出金制限、IPアドレス制限など、ユーザー自身が設定できる強固な防御策も整備されています。これらは使ってこそ意味があり、「設定していない」「知らなかった」では済まされない時代になっています。
デジタル化が進むなか、投資環境はますます便利になっていますが、それと同時に「自分の資産は自分で守る」意識がより一層求められるようになっています。今一度、ご自身のセキュリティ対策を見直し、安心して資産運用ができる環境を整えていきましょう。
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