インターネットが日常生活の中心となった現代、私たちの個人情報や企業の機密情報がインターネットを通じてやり取りされています。その一方で、サイバー攻撃の手法も年々巧妙化し、企業や個人を狙った攻撃が増加しています。その中でも頻繁に行われている攻撃手法が「DDoS攻撃」です。
DDoS攻撃は、一見すると理解しづらいかもしれませんが、その脅威を理解し、適切に対策を講じることが重要です。本記事では、DDoS攻撃の基本的な仕組みから、なぜそれが危険なのか、そしてどのように対策をとるべきかについて詳しく解説します。
DDoS攻撃とは?
DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃とは、「分散型サービス妨害攻撃」とも呼ばれるサイバー攻撃の一種です。DDoS攻撃は、複数のコンピュータを使ってターゲットとなるサーバーやネットワークに過剰な負荷をかけ、正当なユーザーがサービスを利用できないようにする攻撃です。
これにより、ターゲットのウェブサイトやオンラインサービスがダウンしてしまい、サービス提供者に対して重大な影響を与えることになります。
DDoS攻撃の特徴的な点は、攻撃を実行するコンピュータが一台ではなく、複数のコンピュータが関与しているところです。これにより、攻撃を受けたターゲットはその攻撃のトラフィックを一つ一つは特定できず、正当な通信を識別することが困難になります。
DDoS攻撃の仕組み
DDoS攻撃は、複数のコンピュータ(ボットネットと呼ばれる)を使って行われます。攻撃者はまず、マルウェアを使って世界中のコンピュータやインターネット接続機器に感染させ、これらを自分の管理下に置きます。こうしたコンピュータが「ボット」と呼ばれ、これらを一斉に操作してターゲットに対して攻撃を行います。
ボットの作成
攻撃者は、特定のソフトウェアを使って多くのコンピュータにマルウェアを感染させ、そのコンピュータをボットとして使えるようにします。これらのコンピュータは感染後、攻撃者の指示に従って一斉に動作します。
攻撃の実行
攻撃者はボットネットを用いて、ターゲットとなるサーバーやネットワークに大量のリクエストを送信します。これにより、ターゲットのシステムは処理能力を超えるトラフィックを受け、サーバーが停止したり、ウェブサイトが表示されなくなったりします。これにより、ターゲットが提供するサービスが一時的に停止することになります。
DDoS攻撃の種類
DDoS攻撃にはいくつかの種類があります。それぞれの攻撃方法はターゲットに与える影響や攻撃の仕組みが異なります。主な種類をいくつか紹介します。
帯域幅消費型攻撃(Bandwidth Attack)
帯域幅消費型攻撃は、ターゲットのインターネット接続の帯域幅を占有し、正常なデータのやり取りができないようにする攻撃です。この攻撃は、大量のデータをターゲットに送りつけ、ネットワークのトラフィックを圧迫します。簡単に言うと、大量のデータを送りつけることでインターネット回線を詰まらせる・パンクさせるということです。
例えば、ターゲットに対してランダムにデータを送信したり、大きなファイルを送ることによって、ターゲットのインターネット接続を過負荷にさせます。
リソース消費型攻撃(Resource Depletion Attack)
リソース消費型攻撃は、ターゲットのサーバーの計算能力やメモリ、ストレージなどのリソースを大量に消費させる攻撃です。例えば、ターゲットのウェブサーバーに対して、繰り返しリクエストを送信し、サーバーのリソースを消耗させます。これにより、サーバーが過負荷になり、サービスが停止します。
アプリケーション層攻撃(Application Layer Attack)
アプリケーション層攻撃は、ターゲットが提供するウェブサービスやアプリケーションに対して、特定のリクエストを送信し、その処理に負荷をかける攻撃です。
例えば、HTTPリクエストを大量に送りつけることで、ウェブサーバーやデータベースサーバーに過剰な負荷を与え、システムが動作しなくなるように仕向けます。
DDoS攻撃の影響
DDoS攻撃による影響は、個人から企業、政府機関に至るまで非常に深刻です。以下は、DDoS攻撃が引き起こす主な影響です。
サービス停止
最も明らかな影響は、ターゲットのウェブサイトやオンラインサービスが停止することです。これにより、サービスを利用しているユーザーはアクセスできなくなり、ビジネスに大きな損害を与える可能性があります。
また、オンラインバンキングや交通サービスのように社会インフラが利用できなくなると大変な混乱を招きます。
経済的損失
サービスが停止することで、その企業は直接的な収益損失が発生します。また、DDoS攻撃を受けて復旧作業を行うためにかかる費用や、セキュリティ対策の強化にかかるコストも無視できません。特に、オンラインビジネスやサービス提供を主業務としている企業にとって、DDoS攻撃は大きな経済的打撃となります。
ブランドイメージの低下
DDoS攻撃を受けた企業は、その攻撃が原因で信頼性が低下し、ブランドイメージが傷つくことがあります。特に、企業が顧客に対して提供するサービスが中断されると、顧客はその企業に対する信頼感を失い、競合他社に乗り換える可能性もあります。
近年の事例
近年の記憶に新しいDDoS攻撃の事例として、以下のようなものがありました。
日本航空(JAL)への攻撃(2024年12月)
2024年12月26日、日本航空(JAL)のウェブサイトが大規模なDDoS攻撃を受け、一部のオンラインサービスが一時的に利用できなくなりました。この攻撃により、予約やフライト情報の確認が困難となり、多くの利用者に混乱をもたらしました。攻撃元の組織は特定されていませんが、年末年始の繁忙期に合わせて行われた可能性が高いとされています。
りそな銀行、みずほ銀行、NTTドコモへの攻撃(2024年12月~2025年1月)
JALと同じころ、りそな銀行、みずほ銀行、NTTドコモなどの企業もDDoS攻撃の影響を受けました。これらの攻撃により、インターネットバンキングや一部のオンラインサービスでアクセス障害が発生しました。こちらも攻撃元の組織は特定されていませんが、年末年始の繁忙期に合わせた攻撃でした。
DDoS攻撃への対策
DDoS攻撃から守るための対策は、事前の準備が非常に重要です。以下に、DDoS攻撃に対する一般的な対策方法を紹介します。
トラフィック監視
DDoS攻撃を早期に検出するためには、トラフィックの監視が必要です。異常なトラフィックが発生した場合にすぐに対応できるよう、常にトラフィックを監視するシステムを導入しましょう。
DDoS対策サービスの利用
多くのIT関連企業が、DDoS攻撃に特化した防御サービスを提供しています。これらのサービスを利用することで、DDoS攻撃を事前に検出し、攻撃が始まる前に防御することが可能です。
冗長化(多重化)
ネットワークやサーバーの冗長化を行うことで、1系統がDDoS攻撃を受けても他の系統のサーバー・ネットワークでシステムを継続することができます。これにより、攻撃によるダウンタイムを最小限に抑えることができます。
インフラのスケーラビリティ強化
攻撃を受けてもそのトラフィックに耐えられるように、インフラのスケーラビリティを強化することが重要です。クラウドサービスなどを活用して、トラフィックの増加に動的に柔軟に対応できる環境を整えておきましょう。
まとめ
DDoS攻撃は、インターネットを利用する企業や個人にとって大きな脅威となっています。攻撃者は、複数のコンピュータを使ってターゲットに対して過剰なトラフィックを送り、サービスを停止させようとします。
この攻撃によって、ウェブサイトやオンラインサービスが停止すると、経済的な損失やブランドイメージの低下を引き起こす可能性があります。
DDoS攻撃に備えるためには、トラフィックの監視、DDoS対策サービスの導入、インフラの冗長化とスケーラビリティ強化などの対策を講じることが大切です。早期発見と対応が鍵となるため、事前に準備しておくことが求められます。
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